専門家が伝える“運動療育”——体と心を育む子育てのヒント

専門家が伝える“運動療育”——体と心を育む子育てのヒント

2025-11-10

—— 京極朋彦さんインタビュー

「ちゃんと座っていられない」「すぐ気が散ってしまう」——。 そんな子どもの姿を前に、心配になったり、自分の関わり方に迷ったりすることはありませんか?

私達親が“困りごと”と捕らえられがちな、子どもたちの特性の背景には、心や感覚、体の発達のバランスが関わっているかもしれません。

今回は、コンテンポラリーダンサーとして、そして発達特性のある子どもたちの運動療育に携わってきた京極朋彦さんに、“体と心を育てる運動療育”の考え方と、家庭でできるヒントを伺いました。

■「できなくてOK」から始まる——自己紹介と活動のいま

兵庫県神崎郡神河町。人口が少ない小さな町で、京極朋彦さんは活動しています。
もともとは東京出身。コンテンポラリーダンサー・振付家として20年間、日本と海外を行き来しながら舞台に立ってきました。

同時に、発達障害やグレーゾーンと呼ばれる子どもたちを対象にした運動療育の分野でも10年の経験を重ねています。

現在は、オンラインでの親子支援と並行して、兵庫県内6か所の幼稚園・保育園で「からだあそびの時間」と名付けた年間プログラムを実施。

「僕のクラスの合言葉は『できなくてOK』『やらせなくてOK』『比べなくてOK』なんです」

ダンスの経験を活かしながら、体を通して子どもたちの心と発達を育む授業を展開しています。

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■運動は“脳と心の土壌”を耕す

運動療育の核は、身体機能の発育だけに留まりません。

「有酸素運動をすることによって脳内を活性化していくんです」

神経細胞自体の繋がりを強めてく…実際の困りごとが減ってくるっていう目に見える結果に落とし込んでいくことができるそうです。
そして、それは子どもたちの心にも直結します。

「運動そのものが、心を育てる土台になるんです」

子どもたちは、比べられたり、思うようにできなかったりする中で、自分を責めてしまうことがあります。

京極さんは、そんな子どもたちにまず“安心して自分を出し切れる場”を整えることが何より大切だと話します。
体を動かすことを通して、「できた」「できなかった」といった結果ではなく、“自分の存在そのものが受け入れられている”と感じられる体験を重ねていく。

その安心感が、やがて子どもたちの挑戦する力や「もう一度やってみよう」という意欲につながっていきます。

■家庭だからこそできること——“親も本気で”遊ぶが近道

家庭で出来る運動のヒントを尋ねると、返ってきたのは意外にもシンプルな提案でした。

「一番手っ取り早いのは親子で本気で鬼ごっこする事です」

「あ、お母さんマジじゃん」と思った瞬間こそ、子どもの脳が一番刺激を受けるタイミングです。
アレンジとして「しっぽ取り」にすれば、ボディーイメージ(どこまで手が届くか、力加減など)も育ちます。

ルールや手順よりも、親が楽しむ姿そのものが最大の教材になる、という視点です。

「お母さんにしかできないことっていうのがあって、実はそれがどんな知識やスキルよりよりめちゃくちゃ重要なんです」

■変化のドラマ——“出し切る”から動き出す

実際の運動療育の現場では、印象的な瞬間が何度もあったそう。

「僕、子供に45分間、殴られ続けたこともあるんですよね」

怒りや不安が溢れる子に対して、まずは安全に“出し切る”場を整える。

「心拍数を上げ、感情を出し切って充分発散して初めて、小さなことから挑戦する心が生れ始めます」

「出し切ってからやってみて、『できるじゃん』みたいな感覚が生まれる。
それで『できた自分』を感じた瞬間、そこから心も、運動能力自体も、どんどん伸びていく」

表情が変わり、笑顔がこぼれるその瞬間——。
現場に立つ京極さん自身も、子どもの変化に心を動かされるといいます。
また、言葉の芽生えにも立ち会いました。

「運動療育をやってる間に自然と笑顔になって笑い声が出る…
心拍数が上がり、呼吸が荒くなって、その音を自分で聞いて認識する。
そうして自分の呼吸や声を知るところから、『発話する、発語する』っていう過程が始まります」

「全く喋らなかった子が、運動療育中に初めてお母さんの前で『ママ』って言ってくれた時は、お母さんも僕も泣きましたね」

子どもの“初めての一言”が生まれた瞬間、そこには確かなぬくもりがありました。

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■支援のプレッシャーを軽くする——“観察”が支援の第一歩

「僕、発達障害とかグレーゾーンってないって思っているんですよ」

2022年から、医学界では“発達障害”という呼び方をやめて、“神経発達症”という表現に変える方針が示されました。

「そもそも、発達障害は病気ではなく特性です
『治す』ものではなく、その子に合ったサポートや環境があれば、十分に力を発揮できる、その子自身の「特性」なんです」

と、京極さんは言います。 そんな考えから生まれたのが、印象的なこの言葉。

「子育てを自由研究だと思ってみて下さい」

比べること、正解を探すことから一歩離れて、“提出期限のない自由研究”として子どもを観察する。

うまくいかない日も、泣いてしまう日も、「なぜできないんだろう?」ではなく「今、何を感じているんだろう?」と問い直してみる。

「観察って、支援の第一歩なんですよ。
お母さんが見ている“その子だけの姿”は、誰よりも貴重なんです」

焦らず、比べず、見守る。
その積み重ねが、子どもの“発達”というよりも“成長”を、静かに後押ししていくのです。

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■今日からの小さな一歩(家でできる運動療育のコツ)

京極さんが教えてくれたのは、難しい専門知識ではなく、今日から家でできる、親子のための“小さな工夫”でした。
どれも、日常の中で無理なく続けられるシンプルなヒントです。

本気で短く

「一日3分でもいいです」。
全力の“鬼ごっこ”や“しっぽ取り”を短時間で。
子どもは、親が本気で楽しんでいる姿に自然と引き寄せられます。
やらせるより、一緒に夢中になることが近道です。

自宅でデキる運動療育については書籍「運動療育 入門」に基礎となる運動療育を10個、載せていますので参考にしてみてください。

生活に差し挟む

「何時にやる」ではなく、「ご飯の前」や「お風呂の後」など、暮らしの流れに紐づけて自然に続けましょう。
特別な時間をつくるより、日常に少し混ぜるほうが続きます。

安心の場づくり

危ない物は先に片づけ、テレビやスマホはいったんオフ。
必要に応じて、マットを敷くなど、親子がリラックスして“いまここ”を感じられる空間を。
できなくても笑える余白が、子どもの意欲を育てます。

これらの方法は、あくまで入り口にすぎません。
大事なのは、テクニックの先にある“あなた自身の姿勢”です。
京極さんが伝えたいのは、結局のところ“親自身の在り方”——「どう生き、どう関わるか」が、子どもにとっていちばんの学びになるということ。

メソッドよりも、あなたが“本気で楽しんでいる”その姿こそが、子どもの心と体を育てる一番の土壌になるのです。

■さいごに

「あなたの育児は選べるし、あなたの人生も選べる。子どもも自分の人生を選べる」

正解より“あなたらしさ”を。完璧より“未完成な今”を楽しむ。

子育ては、誰かの答えをなぞるものではなく、親と子が一緒に“見つけていく”ものです。
うまくいかない日も、笑いあえる瞬間があればそれで十分。

できない日があっても、それは「育っている途中」という証。立ち止まることも、深呼吸することも、すべてが子育ての一部です。
明日は少し肩の力を抜いて、子どもを“観察する一日”にしてみませんか。

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京極 朋彦(きょうごく・ともひこ)|ダンサー/運動療育

コンテンポラリーダンサー・振付家として20年活動しつつ、発達特性のある子どもたちの運動療育に10年携わる。拠点は兵庫県神河町。
園向けの年間プログラム「からだあそびの時間」では、有酸素運動やダンスの要素を取り入れ、からだ・脳・心の土台を育む実践を展開。
コロナ以降は、保護者を介して子どもへ間接的な変化を届けるオンライン支援も継続。
クラスの合言葉は「できなくてOK/やらせなくてOK/比べなくてOK」。
親子で楽しくデキる運動療育で、遊びから子どもの発達を促す関わりを提案している。

京極さんの詳しい情報はこちらから

京極さんの書籍情報

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